F.COOKE ロンドン下町のグルメなウナギとパイ&マッシュの店に行きました。

ロンドンの下町にウナギを食べに行きました。

イギリスでウナギを食べるなど、グルメ通の方でもあまりピンとこないかもしれませんが、これがあるのです。

もちろん、日本風の蒲焼などではなくて、ロンドン流のローカルフードです。

パイ&マッシュとウナギの歴史

ところで、ロンドンっ子とウナギの関係は11世紀頃まで遡るそうです。

もともとテムズ川で穫れたウナギが食べられていましたが、18世紀にはオランダから輸入するようになりました。

18世紀後半には、フライング・パイマンと呼ばれる行商人の売るウナギのパイが人気を博しました。

19世紀、産業革命によってテムズ川の水上輸送は飛躍的に増えました。

そして、多くのドックがテムズ河沿いにでき、これらのドックで働く男たち、ドッカーズがロンドンのウナギ料理を育て、19世紀末から20世紀初頭にかけてパイ&マッシュの店が次々に誕生しました。

ドッカーズだけでなく、この地区に住む労働者たちが手軽に食べることができる栄養たっぷりの料理がウナギだったのです。

現在、テムズ川沿いの下町のイーストエンドは、ドックからも近かったのでウナギを食べさせる店40軒もが集中しています。

ウナギ料理が出されるのは、「パイ&マッシュ Pie & Mash」と呼ばれる店で、マッシュポテトを添えたパイとともに、ウナギの煮込みやゼリー寄せが提供されます。

パイ&マッシュの店、F.Cooke

F.COOKE

さて、今回私が訪れたのは、Broadway Market にある創業1862年、140年も続く老舗、「F.Cooke」です。

地下鉄Central Lineの駅、Bethnal Grennから、北の方に歩いて行って10分くらいの所にあります。ただし、Bethnal Grenn駅だけでなく、他の地下鉄駅からも行けるようですので、そこは検討の必要があると思います。

レストランと言うよりは、下町の食堂と言ったほうがピッタリの庶民的な店です。

ロンドンの下町にあり、本当に気取らないというか、ロンドン西部の地域とは全く違った雰囲気で決して豊かな地域であるとは言えません。

訪問した当日は、たまたま土曜日で店の前の通りは、青空市場でごった返していました。

F.Cookeの四代目の主人は、典型的な下町言葉のコックニー訛りで話すBob Cookeさんです。

ボブさんのウナギ料理は、リカーと呼ばれる秘伝のパセリソースをかけたウナギの煮込み Hot eels です。普通は、これにマッシュポテトをたっぷりと添えます。

pie and mash
(参考)F.Cookの料理ではありません。

ビデオや写真のウナギの煮込み料理では、マッシュポテトがついていませんが、これは私の注文ミスです。

そしてゼリーの中に煮込んだウナギの切り身を入れたウナギのゼリー寄せがあります。

どちらもパイアンドマッシュの店では、必ず出されている庶民に人気の下町の味です。

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左側がウナギのゼリー寄せ、右側が煮込みです。

ボブさんの店では、生のウナギを出すこともあるそうですが、毎日出しているのはウナギの煮込みとゼリー寄せです。

ボブさんは、これらの料理を全部、一人で地下で調理しています。

ウナギの煮込み Hot eelsの作り方

Hot eels

調理の仕方ですが、まずはウナギの切り身を鍋で20分ほど煮込みます。

皮と骨はつけたまま煮込むのがロンドンの下町流です。

そのため、ウナギの煮込みなどは小骨がいっぱい入っていますので、食べながら口から取り除かなければなりません。

そして、ウナギの煮込み料理のコツは、ソースとなるパセリソース・リカーの作り方にあります。それぞれの店のリカーには、秘伝の味を持っています。

リカーとは、ビデオや写真で薄緑色の色をしたソースのことです。

ボブさんのリカーは、新鮮なパセリをたくさん使います。

まず、パセリに塩を加えて鍋で煮ます。

次に、小麦粉を水で溶いたものを加えてとろみを出します。

カタマリができないように、かき混ぜながら少しづつ加えていくと、クリーミーな緑色になります。

ここでのコツは、煮汁が沸騰していることです。そうでないと固まりができてしまって、スープにトロミが出てこないそうです。

煮込んだウナギにパセリソースのリカーをかけて出来上がりです。

ミートパイについて

Meat Pie & Mash
マッシュポテトは少な目にお願いしたため、通常よりもかなり少ない量です。

このパセリソースは、ミートパイにもかけて出されます。

ボブさんは、パイの生地も毎日自分で作っています。

もともとパイ&マッシュの店では、パイはウナギのパイでした。

第二次大戦後、ウナギが高価になり、それまで高かった肉が安くなったことからパイの中身がウナギから肉に変わりました。

こうしたパイを作る技術や道具は、もともとウナギのパイを作るために開発され発達したものです。

ウナギのゼリー寄せ Jellied eels について

Jellied eels

現在、ロンドンのウナギは、オランダやアイルランドから輸入され、ビリングスゲート魚市場で捌かれます。

ボブさんも、毎朝ビリングスゲート魚市場の業者「MICK’S EELS」でウナギを仕入れています。

このミックでは、ウナギのゼリー寄せを作ってパイ&ドマッシュ各店に卸していて、ボブさんの店のゼリー寄せもここで作ったものです。

なお、ウナギのゼリー寄せを作っているのは、ロンドンでは現在この店1軒だけです。

ウナギのゼリー寄せの作り方は、輪切りにしたウナギの切り身に塩、酢、レモン、ナツメグなどを加えて大鍋で煮込みます。

煮込む間は、丁寧にアクを取り続けることが肝心です。

煮込んだウナギは、ゼラチンの入ったボウルに移されます。

本来は、ゼラチンを入れなくても固まるそうですが、ゼラチンを入れています。

そして冷蔵庫で冷やしてウナギのゼリー寄せができます。

ウナギ料理の感想について

F.COOKE MENU

メニューでもお分かりのように、ウナギの煮込み、ゼリー寄せは3.50ポンドで、560円くらいです。

ロンドンにしては、かなり安い料理であると言えると思います。

正直、ウナギ料理は蒲焼きであるという固定観念があれば、ロンドンのウナギ料理は美味しくないと思います。

特に、煮込みについては、パセリのリカーソースは味が薄く、そのまま食べてはもの足らないと感じるでしょう。

しかし、イギリスの料理全体に言えることですが、イギリスでは出された料理をそのまま食べるのではなく、テーブル上にある塩やコショウ、ビネガーなどで自分で味をつけて食べることが前提です。

そのため、自分流に味をつけて食べると美味しいものになります。たぶん・・・

日本人は、このような食べ方に慣れていないため、イギリスの料理は不味いということになることが多々あるように思います。

ただ、イギリスでもこのような食べ方は国際的に認められないと思うようになり、最初から味付けをきちんとするようになってきていて、このことにより最近イギリスの料理が良くなったと言われていると思います。

後付け調味については、食習慣や文化の違いもあり何とも言いようのないのですが、こういう文化であると知っていても損はないと思います。

ウナギのゼリー寄せですが、こちらはウナギの旨み自体をダイレクトに感じられ、後付の調味をしなくても美味しくいただきました。

ミートパイも同様で、後付け調味不要で大変美味しいものでした。

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◯ F.COOKE

9 Broadway Market, London E8 4PH
+44 (0)20 7254 6458
Open 10am-7pm Mon-Thur; 10am-8pm Fri, Sat.


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